自在に操るたがねと技

江戸時代から形変わらぬまま今も愛される銅のおろし金。
料理に欠かせない調理器具として、広く使われてきた銅製おろし金を作るのは東京で唯一の工房となった「江戸幸 勅使川原製作所」です。
一から手作業で作るおろし金は機械には出せない自然な目のズレを作ることで心地よい切れ味が生まれます。
古くから愛されるおろし金はこうして作られるのです。

この切れ味の良い目立てを作り出すには技術だけではなく、自前で焼き、叩いて作る鏨(たがね)が重要になってきます。
鏨の刃先の立て方によって目の出方が異なります。
納得のいく目を打ち出せる鏨を研げるようになると一人前と言われるほど、おろし金を作るのに重要な鏨。
技と道具を巧みに操り、リズミカルに鏨を打ちつけきめ細かい目を作り出す。
長年かけてようやく身につく手仕事だからこそ人々に愛される一品へと仕上がります。
繊細な手仕事は際立つ仕上がりに

小さなたくさんの刃を立てて作る銅おろし金は、食材の組織を必要以上に壊さないため、大根おろしも水っぽくならず、また口当たりも柔らかいです。
一度使うと手放せない品として多くの料理人にも愛されています。
無駄な力を加えず、引いても押してもおろせるような目の立ち方をしているのも人気の一つです。

変色や錆び止め効果を付ける錫引きも手作業で行います。
長年研究を重ね辿り着いた技法で、融点の低い錫を上手く扱いながら丁寧に銅に重ねていく。
仕上げには丁寧に洗い磨くことで「酸気」を取ります。
こうした丹念な工程が食材の味を落とさず、おろすことができます。